腕枕で眠らせて*eternal season*
平日の午前中はお客さんが少ないのは、全国どこの美術館でも共通みたい。
ほぼ貸切り状態の館内はゆるくクラシックのBGMが流れ、広い空間にたくさんの硝子職人による作品が展示されていて私の目を釘付けにする。
いろいろなデザイン、様々な種類の硝子たち。
ランプにグラス、飾り皿にクリスタルのオブジェ。
ああ、素敵、素敵。
どれも本当にキレイ。
嬉しくてひとつひとつをマジマジと眺めていたけれど、ふと気付いた。
……紗和己さん、私にこれを見せるためにここへ来たの?
煌めく硝子を映したまま目をしばたかせる。
……私…また紗和己さんに喜ばせて貰ってる?今日は紗和己さんの誕生日なのに。私が彼を喜ばせる日なのに。
途端に、胸のワクワクをモヤモヤが覆ってゆく。
「…紗和己さん、こんな素敵な所に連れてきてもらってすごく嬉しいけど…今日は紗和己さんの行きたい所に行って欲しかったな」
申し訳ない気持ち。
嬉しいけど、嬉しいんだけど、違うのに。
上手く消化出来ない想いが顔に滲む。
すると紗和己さんは、真面目な顔で再び私の手を取ると
「じゃあ、遠慮なく」
と言って早足で展示室を抜けていった。
「え?え?」
本当に今日の紗和己さんはよく分からない。
何をしにここへ来たのかも、私をどうしたいのかも。
戸惑っている私に彼は更に付け加えて混乱に陥れる。
「ここから先はまだ内緒です。目を閉じて下さい」
もう、よく分かんないけどどうにでもなれ。
連発される紗和己さんの謎の言動に、私はされるがままになってぎゅっと目を閉じ彼に手を引かれながら歩いた。