腕枕で眠らせて*eternal season*
「……紗和己さん……これ……」
震える瞳の私を穏やかに、けれど真剣に見つめて、紗和己さんが口を開く。
「…覚えていますか、美織さん。2年前の僕の誕生日に貴女が言ってくれたコト」
「え…」
「誕生日くらい、ワガママを言って下さいって」
覚えてる。甦る。あの日の思い出が。
ふたりの恋が始まった、あの日の事が。
「貴女に祝うようになってもらってから、僕は毎年誕生日にワガママを言ってます。
去年も…僕は貴女と結ばれたいと願い、叶えてもらいました」
初めて肌を重ねて、腕枕の意味を知ったあの日。
甦る。私の胸に、あの日の幸せが。ときめきが。
そして。
「……美織さん。今年は人生で1番のワガママを言います」
―――紗和己さん。
「貴女の人生を、僕にください」
―――ああ。
やっと分かった。
満たされた毎日の中で私がずっと求めていたもの。なりたかったもの。
私、この人の半分になりたかったんだ―――
胸が、眩いキラキラで埋め尽くされて言葉が出てこない。
熱すぎる涙ばかりが、ただ零れ落ちていく。
「……紗和己さん…、私も……貴方と歩みたい……同じ道を一生…寄り添って支え合いながら…ずっと……」
それでも、涙につっかえながら一生懸命伝えた言葉を、紗和己さんはまっすぐに受けとめてくれた。
ふたりが出会ってから、3度目に迎えた紗和己さんのバースデーは、とても大きな贈り物をしあった。
薬指に煌めく永遠を意味するエタニティリング。センターで輝くピンクのダイヤが甘く恋心を映し出す。
もらった指輪はきっと私の想いそのもので。
そして私はその心を全て、貴方に差し出した。
「美織さん。貴女が僕の何かになりたいと言ってくれたように、僕も貴女の何かになりたかったんです。
なりましょう。お互い、かけがえのない何かに。
そしてふたりで…幸せになりましょう、永遠に」
「紗和己さん…愛してる。私、絶対紗和己さんを幸せにするよ」
「ふふ、僕だって負けませんよ。もう嫌ってほど、愛して、幸せにして、絶対に離れませんから」
煌めきの中で笑った紗和己さんは、これ以上ないほど幸せそうな笑顔だった。
きっと、同じくらい幸せな色をしている私の頬を撫で、紗和己さんは今までで1番甘いキスをした。