腕枕で眠らせて*eternal season*
今日じゃない。明日じゃない。
貴方からもらった溢れるほどの幸せを、私は生涯を掛けて返してゆく。
今は与えられてばかりの私だけど、きっと共に歩む事で貴方に与えられる私にもなっていける。
もう、幸せに躊躇わない。
私の幸せは貴方の幸せでもあるんだから。
「気に入って頂けましたか?」
帰りの車で、薬指の指輪を眺めながら抑えきれない鼻歌をこぼす私に、紗和己さんも嬉しそうに聞いた。
「うん。すごく嬉しい。さすが紗和己さん、センスいいね。それにサイズもピッタリ」
柔らかなV字を描くリングは本当に可愛らしくて、私の手指さえも美しく魅せてくれる。
ゴキゲンの私に、紗和己さんは照れくさそうに目を細めると
「実は…佐知さんに協力してもらったんですよ」
と、プロポーズの舞台裏を激白してきた。
「えっ!?佐知に!?」
「ええ。2年前の冬、初めてお会いした時に佐知さん僕に言ったんですよ。『美織の事で相談があったら私にして。私、あの子の母親みたいなもんだから』って」
えええっ!!
佐知ったら、いつの間にそんなコトを!?
「その時『美織の指輪のサイズも好みも把握してるから、必要な時は聞いてね』とまで言ってくれて…今回、そのお言葉に甘えてしまいました」
さ、佐知ってば!!
もう!友情はありがたいけど、しっかりし過ぎじゃない!?
2年前から私の婚約指輪の心配までしてるだなんて!
感動の演出をサポートした佐知が誇らしげにVサインをする姿が目に浮かぶ。
「もう、まいっちゃうなあ」
眉毛を八の字に下げて笑いだしてしまった私に、紗和己さんも楽しそうにクスクス笑う。
「電話で相談に乗って貰ってるとき、美織さんの色んな話を聞かせてもらいましたよ」
「えっ」
ひょんな言葉に私の笑い声がピタリと止まった。
「学生時代のコトとか。ふふ、意外でした。美織さん高校生の頃は結構…ふふふ」
「ちょっ、ちょっと待って!!何!?何聞いたの!?」
「あ、これ言っちゃいけないんだっけ」
「ちょっとぉ!紗和己さあん!!」
夕焼けの高速を走る車の中に、賑やかな声がこだまする。
オレンジの夕陽をキラキラ映すのは、車のキーに着いている始まりの日のストラップ。
そして
私の指で煌めく、新しい始まりの、証。