腕枕で眠らせて*eternal season*
「いらっしゃい、お待ちしてましたよ」
家に到着すると、案の定、嬉しそうに私たちを(と云うか紗和己さんを)迎えた父と母に、彼は礼儀正しく腰を折り挨拶をした。
「本日はお忙しいなか、お時間頂きましてありがとうございます」
私もつられて彼の隣で丁寧に頭を下げる。
…なんだか。
こうして、ふたり揃って頭を下げる事が、既に『始まっている』気がする。
それは初めて感じる心地よい緊張となって、私の中を駆け巡った。
そうして挨拶を済ませ、紗和己さんが手土産を渡していると
「水嶋さん、こんにちは。今日のネクタイ、ダミアーノプレスタですか?」
空気読まないヤツが部屋にやってきた。
良介うるさい。なんで一目見ただけで分かるのよ。というか今日はそれどころじゃないっての。
ウズウズと喋りたそうな良介を遮って、私は紗和己さんを奥の席へと案内する。
部屋には既に食事の用意がされ、その内容から迎える側の気合いがヒシヒシと感じられた。
蟹だ。特上寿司だ。お母さん得意のローストビーフだ。なんて分かりやすい。
父も母も、紗和己さんを気に入ってくれてるのは嬉しいんだけど、こうも結婚の申込を手放しで歓迎されると、なんだか私『どうぞどうぞ』って熨斗付けて差し出されてるみたいでちょっと複雑。
「紗和己さん、座って。私、飲み物用意してくる」
紗和己さんを座らせ、母といっしょにキッチンへ向かおうとした時。
歩き出そうとした私の手を、紗和己さんがクッと掴んだ。
…あっ。
それに気付いた父も母も、良介も、空気を察して向かいの席へと座る。
歓談の前に短期決戦に持ち込まれる予感に、部屋の空気がピンと張り詰めた。