腕枕で眠らせて*eternal season*
「紗和己くんは、今どき珍しいくらいイイ青年だねえ!いやあ、美織はいい人に貰われて良かった、私も肩の荷がひとつ降りたよ!」
「お…お父さん、飲み過ぎ!!」
重大な本題が済んだ安心感からか、和やかな歓談の食事で杯の進んだ父は普段見せないような上機嫌な笑顔を零し、ついでに本音までポロポロと零し始めた。
紗和己さんはニコニコとして何も気にしていない様子だけど、私はそんなにお父さんの肩の荷になってたのかと秘かにショックを受ける。
やっぱり今日の私の背中には熨斗が付いてる気がするなあ。
紗和己さんも顔には出さないけど、『なんか、押し付けられた?』なんて思ってたりしたらどうしよう。
「親父、昨日あんま寝てないから酔っ払うの早いんだよ。
ほら、親父。少し向こうの部屋で休も」
良介が珍しく気を利かせて、すっかり出来上がった父に肩を貸しながら部屋を出ていった。
「ゴメンね、紗和己さん。お父さん浮かれてるみたい」
私が謝ると、紗和己さんはいつものようにニコリと目尻を下げて
「いいえ。一緒に美味しいお酒が頂けて僕も嬉しいですから」
と、上機嫌な様子で言った。
「そう言ってもらえるなら良かったわ。ほら、お料理もまだまだあるからいっぱい食べてね」
「ありがとうございます、遠慮なくいただきます」
お皿に取り分けた料理を美味しそうに口に運ぶ紗和己さんの姿に、母も嬉しそうに顔を綻ばせる。
3人になった居間で、のんびりと食事をしながら会話を弾ませていると、母が紗和己さんのコップにビールを注ぎながらふいに言った。
「ねえ紗和己さん。この子は臆病で泣き虫でしょう?
昔からそうで、よく親の手を焼かせていたんですよ」