腕枕で眠らせて*eternal season*
女の子がお砂糖とスパイスで出来ているのは
マザーグースで有名なお話。
じゃあ、優しくてステキなあのひとは
いったい何で出来ている?
「サワキおじちゃん来たーーー!!」
「おじちゃーーーん!!!」
「Hooray!!(ヤッターー!!)」
水嶋家のインターフォンを鳴らそうとした瞬間、玄関から飛び出してきた3つの小さな影は、そのまま勢いよく門を開いて紗和己さんへと体当たりした。
「おじちゃん、肩車して!」
「スペシャル高い高いして!」
「Lassen Sie uns spielen!(遊ぼう!)」
なんだなんだ。何事だ。
あっけにとられてる私の瞳に映ったのは、紗和己さんの足に嬉しそうに絡まるふたりの男の子とひとりの女の子。
元気いっぱいのチビッ子たち。男の子は見たところふたりとも小学生低学年くらい、女の子はもう少し小さくて幼稚園くらいみたい。
その小さな頭たちを順番にクリクリと撫でまわし、紗和己さんは目を細めると
「みんな久しぶり、元気そうで良かった。
けど、ほら。ご挨拶が先だよ」
そう言って子供たちを私の方へと向き直させた。
「鈴原美織さん、僕のお嫁さんになる人だよ。今日は彼女をみんなに紹介しに来たんだ」
素直に従ったお子様達のつぶらな瞳が私に視線を集中させる。
「こ…こんにちは、鈴原美織です。はじめまして…」
さっきから面食らいっぱなしの私がオズオズと挨拶をすると、一番歳上らしき男の子が
「コンニチハ、マルク・バッツドルフ、デス」
と述べて頭を下げてくれた。
次いでもうひとりの男の子と女の子が
「大瀬 涼です!こっちは妹の杏です!」
「あんです!こんにちは!」
と、大きな声で挨拶をしてくれて、最後に3人揃ってニーっと無邪気な笑顔を見せた。うわ、カワイイ。
それを微笑ましく見ていた紗和己さんはニコリと口角を上げると
「エライね、よく出来ました」
と言って、もう一度子供たちの頭をクリクリと撫で、最後に
「美織さん、僕の甥っ子と姪っ子です」
と私に向かって得意そうに微笑んだ。