腕枕で眠らせて*eternal season*
思いもよらなかった可愛くて元気いっぱいのお出迎えに、ガチガチに緊張しながら『水嶋家への挨拶』にやって来た私の肩の力はホンワカと抜けた。
ありがたい。だって私、朝から異常に気負っちゃってたんだもん。
両家への挨拶は、本日は水嶋家の番。それはつまり、今度は私が緊張する番。
紗和己さんの実家は神奈川県の住宅街にある一軒家。
私は一度だけこの大きくて立派なおうちにお邪魔した事がある。
同棲を始める前に、紗和己さんが私を親御さんに紹介してくれたのだ。
その日は残念ながらお義父さんは海外出張中で居らずお義母さんだけだったけど、さすがに結婚の挨拶に伺う今日は違う。
お義父さん、お義母さんはもちろん、お嫁に行ったお義姉さんふたりもそれぞれ海外と県外からお子さんを連れて帰ってきているのだ。
水嶋家総出で迎えられる今日の日に、私は朝からすっかり緊張してご飯すら喉を通らない有り様だった。
「ゴメンね、子供たち飛び出して行っちゃって!サワの姿が見えたから嬉しくて待ちきれなかったみたい」
可愛いチビッ子達の出迎えの後に、慌てた様子で玄関からパタパタと出てきたのは長い黒髪が美しいキレイな女の人だった。
うわぁ、美人だ。と思わずその容姿に見惚れる。すると。
「あっ!美織ちゃん?美織ちゃんだよね?!キャア!嬉しい!!」
さっきの子供たちに負けない勢いで美人は私に駆け寄りガバリと抱き着いて来るではないか。
「も、もしかして…ユカちゃん?」
「そう!そうだよー!キャー嬉しい!やっと会えたぁ!!」
うわぁ、嬉しい!ユカちゃんだ!!やっと会えた!
熱烈な歓迎をしてくれたのは、紗和己さんの姉でもあり、私の旧友でもある柚果莉ちゃん。
彼女こそが、私と紗和己さんを結び付けた秘かな恋のキューピッドなのだ。