腕枕で眠らせて*eternal season*
挨拶も済み、手土産も滞りなく渡せたところで、ユカちゃんがお茶を運んできてくれた。
チビッ子達が一緒に戻って来なかったのは、きっと私たちがこれから話をする事に気を使ってくれているんだろう。
お礼を述べてお茶を頂くと、静かになった空間と、いざ本題が迫ってくる予感に、再び自分が緊張している事がカップを持った手が震えてることで分かった。
「父さん、母さん。電話で言った通り今日は大切な話があって来ました」
穏やかな沈黙の後、となりに座った紗和己さんが口火を切った。
その言葉に、正面に座ったご両親も視線を向けて表情を引き締める。
「僕は、こちらの鈴原美織さんと結婚を考えています。ふたりで話し合い、共に家庭を築こうと約束しました」
誠実に両親へ報告する彼の言葉に、私の緊張が一気にピークへと駆け登った。
「ふ、ふつつかものですが宜しくお願い致します」
立ち上がり、言葉をつっかえそうになりながら丁寧に頭を下げる。
この日のために着てきたおろしたてのワンピースに、前で重ねた手の汗がじわりと滲んだ。
「ふふ、美織ちゃんみたいな可愛いお嫁さんが来てくれて嬉しいわ」
「うんうん。美織さん、こちらこそ宜しくお願いしますね」
温かいご両親の言葉が耳に届いて、ふっと緊張が体から抜けた。
ああ、良かった。
安堵が全身を駆け巡る。
紗和己さんの方に顔を向けると、とても嬉しそうな色でにっこりと笑みを返してくれた。
と、次の瞬間。
「およめさん!サワキおじちゃんのおよめさーん!!」
楽しそうにはしゃぐ声と共に杏ちゃんがリビングへと駆け込んで来た。
「ちょっと!杏!まだ入っちゃダメ!」
それを止めようとした茉里江さんと、揃って涼くんとマルクくんもピョコンと顔を出す。
……もしかして、ドア越しに皆で聞いてたの?
その様子に苦笑いを溢した紗和己さんの膝にピョンと飛び乗って、杏ちゃんが小首を傾げた。
「おねえちゃん、おじちゃんとケッコンするの?ウエディングドレス着るの?」
紗和己さんはそれに照れくさそうに微笑み返すと
「そうだよ。世界一キレイな花嫁さんになるんだよ」
そう、幸せそうに答えた。