腕枕で眠らせて*eternal season*
「背が高くて几帳面だからって、小学生の時いっつも掲示係やらされてたよね」
ユカちゃんが紅茶を一口飲んでから言う。
「中学校でも掲示委員会やってたよ。好きなんじゃない?」
それに頷きながら茉里江さんがタルトのフルーツにフォークを刺した。
「あら、でも高校で生徒会副会長やってたじゃない」
お義母さんは空になっていたお義父さんのカップに紅茶を注ぎながら言った。
生徒会!それは初耳だ。
私は口にしたカップをソーサーに戻しながら興味津々な話に身を乗り出す。
「友達に誘われたんだっけ?あの子友達やたら多いからねー」
「でも副会長ってのがサワらしいよね。表舞台に立つんじゃなくサポートに回る辺りが」
「本当ねえ、人のサポートって云うのが控えめなあの子らしいわよね。だから私、紗和己が雑貨屋の経営者になるって言った時は驚いたのよ」
お義母さんの言葉に、ユカちゃんが対角に居るお義父さんに視線を送りながら返した。
「経営者になりたいってのはお父さんの影響じゃない?あの子、お父さんのコト凄く尊敬してるし」
突然自分に注目の集まったお義父さんが驚いた顔をしてから笑う。
「何を選んでも、それを紗和己が好きでやってるのなら喜ばしい事だよ」
息子に対する信頼と愛情が見え隠れするお義父さんの言葉に、私は以前紗和己さんが話していた事を思い出した。
―――
『父の事は尊敬しています。目標でもあり、永遠に追い付けない背中であって欲しいなって、僕の中で思ってる人です』
いつだったかの会話。
『紗和己さんのご両親ってどんな人?』と聞いたとき、真っ先に返ってきた答えがそれだった。
『もちろん、父が不在がちで留守の多い家を守って来た母も尊敬していますが…やっぱり同性の親って云うのは特別ですね。一番身近な憧れですから』
珍しく熱く語る彼の口調に、感心したのを覚えている。
紗和己さんにそこまで慕われる父親。
いつか、会ってみたい。
そう私に思わせるほどに。