腕枕で眠らせて*eternal season*
―――俺の好きだった女は
とても“女の子らしい”女だった。
淡い色のヒラヒラした服。ゆるくカールしたフワフワの髪。ほそっこい手首。爪もいっつもちゃんとしてて、デートの時にだけ控え目な色のマニキュアが塗られてた。
どこか頼りなくてほっとけなくて…男なら一度はこういう女と付き合ってみたいと思うよな。
少なくとも、俺はそうだった。
「一人暮らし?」
新入社員の歓迎会で交わしたその会話が、俺と鈴原美織を急接近させるきっかけだった。
「うん。実家も都内なんだけどね、家からだと会社まで乗り換えが結構面倒で。それに一人暮らししたかったから、頑張って親を説得しちゃった」
そう言った美織の頬はほんのり赤く、乾杯で飲んだビールがほどよく回ってる事が窺えた。
「でもいざしてみると寂しいね。なんだか真っ暗な部屋に帰るのが嫌で、寄り道したり、愛子を道連れに飲みに行ったりして、なかなか帰らないんだ、私」
困ったように笑ったその顔はものすごく男心のくすぐったい所を刺激する。
「危ねーじゃん、そんなの。毎晩フラフラしてたら変な男に拐われんよ?」
「…うん。そうだよね」
叱られたと思ったのか、美織は視線を手元のコップに移してしまった。
「…遊びいってやろうか?」
「え?」
「仕事終わったらさ、お土産もって毎日お前んちに遊びいってやるよ。それなら寂しくないだろ?」
俺を見る美織の顔が驚きと嬉しさに綻んだ。赤みがかってた頬が血色よくピンクに染まっていく。
「ありがとう!端柴(はしば)くんって、優しいね」
ビールの匂い、季節外れの鍋の湯気、先輩や上司のやかましい会話。
そんなものに囲まれた中で見せた美織の笑顔は、とっても素直で可愛らしくて
この子、お姫様みてえと思った。