腕枕で眠らせて*eternal season*
公香は俺たちと同期の入社で、一際目を惹く華やかな容姿に、入社時は社内の男どもを騒然とさせたものだった。
正直、俺も仲良くなりたいなと思って部署配属前の研修の時に話し掛けたりもしたけど、てんで相手にされず。
その後は配属先も別れたし、向こうは男もいるみたいだったから、俺の中ではとっくに忘れかけてた存在だったけど…
「なに吸ってんの?デュオ?」
「ノアール。端柴くんはクール?」
「当たり。ナノブリザード」
そんな他愛ない会話をきっかけに、俺と公香のこの踊り場での逢瀬が始まっていく。
公香は刺激的な女だった。
想像は着いてたけど、かなり男慣れしていてこちらの心を掴むのが抜群に上手い。
「端柴くんってさ、うちの犬に似てる」
「は?犬?」
「そう、髪の感じとか。あはは、ほら」
そう笑って躊躇なく俺の頭を撫でる。無邪気そうに見えて巧妙なボディタッチ。
――あ、コイツ。俺に気がある。
そう思わせるように仕組まれてると分かっていても、美人の掌の上で転がされる気分は悪くなかった。
「蓮崎さんて男いるんでしょ?」
「どうだったかなあ。忘れちゃった。端柴くんは?」
「んー…んー?」
別に。
美織から公香に乗り替えるつもりはなかった。
美織の事はやっぱり好きで大事だとは思うし。
…けど。
社内でも有名な美人。
挑発的で思わせ振りな態度。
それに、多分コイツとのセックスは、楽しい。
「俺も、忘れちゃった」
若かった俺は好奇心と刺激に抗えなかった。