腕枕で眠らせて*eternal season*
「楷斗、昼休み探したんだから。どこ行ってたの?」
「あー、ごめん。打ち合わせあって客と外で飯食ってた」
俺は段々と美織と過ごしていた時間の何割かを公香と過ごすようになっていた。
同じ社内でそんな事をすれば、あっというまに噂は広がったけれど、それでも俺は嘘を吐きしらを切り通した。
「今日、一緒に帰れる?」
「わりぃ、残業あるんだ。資料仕上げてから帰らないと」
「…じゃあ、うち来ないの?」
「うん、またな。また今度」
その時に浮かべた美織の寂しそうな顔を、俺はどうして無視できたんだろう。
『ひとりの部屋に帰るのが寂しい』と零した心を慰めたくて始まった恋だったのに。
公香との関係は深くなるほど刺激的だった。
積極的で官能的なセックス。
並んで街を歩けば、男どもが羨望と嫉妬の目で俺を見る。それに。
「お前、蓮崎さんと付き合ってんの?」
「マジかよ!あの池田主任だってフラレたのに、なんでお前なんだよ!」
そんな話を聞くたびに、俺は“選ばれた男”になった気分だった。
到底仕事では足元にも及ばない上司や先輩に、男として勝ったような自信がついた。
くだらない虚栄心まで満たされて、俺はますます公香に溺れていく。
美織の心をおきざりにして。