腕枕で眠らせて*eternal season*
美味しい朝食を作ってくれるのは、先に起きる紗和己さん。ランチの時間は彼が大抵お店に行ってしまうのでそれぞれだけど、晩御飯は私が担当。
掃除と洗濯は、一緒に暮らし始めた当初、1日中家に居る私が担当すると言ったんだけど
『家に居るからといって美織さんだって遊んでるワケじゃないでしょう。在宅で立派な仕事をしてるんですから、そういうのは無しです。平等にいきましょう』
と理路整然と反対されてしまった。
けど、まあ。彼のキッチリとした性格を見ていると“どちらかが担当”と言う発想自体ナンセンスだったのかも、と思う。
出したものはすぐ片せば散らからない。使った物はその場で洗えば汚れない。
それを心掛けて、後は賢いルンバでも置いておけば、うちの中は大抵キレイ。それでも行き届かないところだけ、時間のある時に掃除すればいい。
そうやって紗和己さんは私と付き合う前から、男の一人暮らしなのに完璧にキレイな住居を保ってきたのだ。
お洗濯だって、夜でも回せる静かでお利口な乾燥機付きの洗濯機なら、いつだって自分が必要だと思う時に回せばいい。
……正直。
私、昔、一人暮らししていた時よりずーっと楽だ。
マメな彼氏、自動掃除機、最新洗濯機。ついでにお風呂は自動洗浄機能付き。
「……いいのかなぁ」
そして私は紗和己さんの作ってくれた焼きたてホカホカのマフィンサンドを頬張りながら、ボソリ呟く。
その声は、テーブルを挟んで向かいに座ってる彼が捲った経済新聞の音に紛れて何事もなく消えていった。