腕枕で眠らせて*eternal season*
プロポーズから挙式までの9ヶ月は、私の人生の中でも最速を誇る流れだったと思う。
結納に式場探し、ドレスに小物にマリッジリング。
親戚に連絡をし、友達に連絡をし、招待客を決めてあっちへバタバタ、こっちへバタバタ。
式の準備だけじゃない。
住居や保険の手続きなんかも考えなくちゃいけないワケで。
毎日がめいっぱい忙しくて、考える事もする事もいっぱいあって。
「迷うなぁ。さっきのレーストレーンのドレスとこっちのティアードフリル、どっちがいいと思う?」
「美織さん、このオーガンジーのトレーンのドレスも素敵ですよ。試着してみませんか?」
「わ、ホント、素敵!…って、紗和己さん、これ以上選択肢増やさないでよー!」
「引き出物は僕の腕の見せどころです。カタログなんかに頼りませんよ」
「すごい。紗和己さん燃えてる」
「当然です。雑貨屋オーナーとして恥ずかしいモノは出せませんからね。とことん拘りますよ」
「招待客の席順作ってみたの。これでいいかな」
「…美織さん疲れてますね。同じ人が3人居ますよ…。今日はもう休んだ方が」
「……うん…もう寝る」
けど。
どんなに忙しくても私と紗和己さんの笑顔は絶えないどころか日々増えていく一方だった。
「ブライダルエステ、順調ですね。前にも増して美織さん、スベスベしてますよ」
「…嬉しいけど、今言われると照れる。紗和己さんのえっち」
「あんまり抱き心地がいいのも考えモノですね。睡眠時間なくなりそうです」
そんなトロトロに甘い会話を交わす夜もあった。
将来を誓い合った中で過ごす蜜月。
幸せ色の未来に、毎日ときめきが止まらなくって。