腕枕で眠らせて*eternal season*
時計が11時を指す頃、紗和己さんは【pauze】へ出勤する。
打ち合わせやら商談やらが無い限り、午前中は在宅で仕事を済ませ、お昼からは本店である【pauze】1号店を中心にお店で業務をすると云うのが大体彼の日常。
…ただ、紗和己さんの経営する雑貨店【pauze】が去年3号店をオープンしてから、彼が昔のようにエプロン着けてお店番をする事はほとんど無くなってしまったけど。
以前はオーナーという立場でありながらシフトフォローに入っていた紗和己さんだけど、さすがに3つのお店でそれをやっていたら身が持たない。
3店舗目が出来たのを機会に【pauze】は全店舗に店長、副店長の二人社員を置くことを確立し従業員数も増やした。
それはそれで会社としてとても効率的だし、紗和己さんも負担が減ってオーナー業に撤する事が出来るのは良いことなんだけど。
出会った頃の、爽やかなバイトのお兄ちゃんみたいな彼の姿が見られないのはちょっと寂しいと思ったりもして。
おっと。閑話休題。
そんなワケで、お日様が青空の真上に来る頃、私は紗和己さんを送り出すと、ベランダにお布団を干しながら駐車場から出ていく彼の車を見送るのが日常となった。
いってらっしゃい。今日も頑張ってね。
そんな思いを籠めて、遠ざかっていく車に小さく手を振った。