腕枕で眠らせて*eternal season*
貴方と過ごす毎日がメモリアル。
アルバムのページのように
刻まれ増えていく思い出には笑顔がいっぱい。
でもね。
時には違う顔したふたりがあったっていいじゃない。
だって私たち、夫婦なんだもの。
とってもとっても長い時間をいっしょに過ごすのだから
私のふくれっ面も、貴方の困った顔も、素直に見せあって
それすらも全部、思い出に変えちゃおうよ。
ぴかぴかーんと、真夏の太陽。
まぶしい。あっつい。
「美織さん、日傘」
「あ、ありがと」
マンションのエントランスを出て、夏の陽射しに顔をしかめた瞬間、開かれ差し出される日傘。
どうせ、すぐ車に乗るのに。
そう思いながら、私に日傘を渡した張本人を見上げると、彼はニコニコしながらこちらを向いていた。
「いいお天気ですねえ。数時間後には日本を出るとは言え、やっぱり晴れの出発は嬉しいですね」
良すぎるほどのお天気の本日。
私と紗和己さんは1ヶ月おくれの新婚旅行へと行く。
行先はオーストリア。
スワロフスキーのクリスタルギャラリーに行きたいと云う私のたっての願いと、紗和己さんのお仕事も兼ねての1週間の旅。
途中、マルクくんの強い要望でウィーンのユカちゃんのお宅にも寄る予定だ。
どう考えてもステキな旅行になる予感しかしなくて、私は胸を弾ませ今日の日を待った。
「ホント、お天気で良かったねえ」
さっき開いたばかりの日傘をパチンと閉じながら、駐車場の車へと乗り込む。
「きっと、いい旅になりますよ」
嬉しそうに言って、紗和己さんはエンジンをかけると空港へと向かって車を出発させた。