腕枕で眠らせて*eternal season*
ざわ、ざわ、と人の行き交う音と間を抜けるアナウンスが独特の空間を作り出す国際線空港。
目的のターミナルへ向かって歩いていると紗和己さんが突然足を止めた。
「すみません、欲しかった雑誌があるんでちょっとコンビニ寄ってもいいですか」
「うん。じゃあ私ここで待ってるね」
そんな会話を交わし、空港内のコンビニへ入っていく紗和己さんを眺めながら人混みを避けて壁際に立った。
さすが国際線、外人さんが多いなー。
なんて、そこはかとなく間の抜けた事を思いながらぼんやり行き交う人々を眺める。
と。
「Hey」
それはそれは流暢過ぎて聞き取れないほどの発音で私に投げ掛けられた。
「えっ?」
驚いて顔を上げた私の視界に映ったのは、陽気をそのまま人にしたような赤髪の外国人男性。
大柄で笑った目尻にいっぱいシワが寄ってるけど、年は若そう。欧米っぽいけど何人だろう?
ぽかんとしている私に、その外人さんは一層ニッコリと笑顔を浮かべてどんどんと話しかけてきた。
けれど
「えっ?えっ??」
典型的なジャパニーズ英語しか出来ない私には、訛りのあるスラング混じりのその人の会話はまったく聞き取る事が出来ない。
うわあどうしよ。まいった。
なんとかぎこちない英語とボディランゲージで答えようとするものの、外人さんは一方的に喋りまくりどんどん私に近付いて、ついには肩に手を乗せてきた。
「あの…困ります」
さすがに警戒心が湧き出して、通じないと分かっていながらも否定を訴える。
やだ、どうしよう。
乗せられた手に嫌悪感がむくむくと顔を出したところで
「What are you doing?」
聞きなれた声の主が私の肩に置かれた手を引き剥がした。