腕枕で眠らせて*eternal season*
一目で夫婦喧嘩と分かる私たちの様子に、空港を行き交う人達が苦笑いをこぼしていった。
それに気付いた紗和己さんが、フーッと大きく息を吐き出す。
「…やめましょう、美織さん。これから新婚旅行なのにこんな言い争いするのは。僕が言い過ぎました。反省します。だから機嫌なおして下さい」
大人の対応。
自分が引いて、事なきを得て。
けれどそれは裏返せば、私を子供扱いしてるからこそ出来る包容だ。
「…紗和己さんのバカ!!」
乱暴に言い放ち、私は自分の荷物を掴むと、紗和己さんを置いて目的のターミナルまで早足で歩き出した。
「美織さん!」
慌てて紗和己さんが私の背中を追い掛ける。
カツカツと大またで頑張って歩くも、彼の長い足が本気を出せば虚しいほどあっさり追い付かれ、私の早足と彼の普通の歩調は結局並んでしまった。
つーんと、子供じみたそっぽを向く私に、紗和己さんももう声を掛けない方がいいと悟ったのだろう、ただ黙って隣を歩く。
むくれた表情100パーセントの妻と、やれやれ困ったなあと顔に書いてある夫の新婚夫婦。
結局私たちは、ほぼ無言の険悪状態を保ったまま日本を発ったのであった。あーあ。