腕枕で眠らせて*eternal season*
(わあ、紗和己さん見て!こうやって上から見ると日本の海も青くて綺麗だよねえ)
(ねえねえ。ドイツの空港で乗り換えのとき、お茶飲みに行こうよ。私、おやつにシュトーレンが食べたいの)
快適に空を翔ぶ飛行機の中で、口から零れそうになるはしゃいだ言葉を、何度もぐっと飲み込んだ。
…ケンカって言うのは、どうして時間が経てば経つほど心が意固地になってしまうんだろう。
長い空の旅も、ワクワクがいっぱいであっという間に過ぎる筈だった。なのに、なのに。
黙って窓の外の青暗い空を眺める私と。
時々こちらを気にしながらも、黙って雑誌を読んでいる紗和己さん。
……こんなはずじゃなかった。
飛行機の窓に映る彼の横顔を見ながら、こっそり眉尻を下げる。
楽しみだったのに。
すごくすごく楽しみだったのに。
なんであんなコトでケンカしちゃったんだろ。
私が悪かったのかなあ。
紗和己さんは親切で言ってくれたのに、あんなつっけんどな態度とっちゃって。
でも。でも。
なんか納得いかない。
だって紗和己さん過保護なんだもん。
あんまり心配され過ぎたら、私、身動きとれなくなっちゃう。
……でも…紗和己さん、謝ってくれたし…
…やっぱり仲直りしようかな。
胸がソワソワとキリキリと痛い。
早く仲直りがしたくて、でもなんだかタイミングが掴めなくて。
ソワソワを抱えたまま窓の外を眺めていた私の方を、突然紗和己さんが向いて声を掛けてきた。