腕枕で眠らせて*eternal season*
夏の強い陽射しをレースカーテンが柔く遮ってくれるリビング。
ひとりになった私は、中央のテーブルにサンキャッチャーの道具を広げ製作作業を始める。
静かで心地好い広い空間。時折ベランダに飾った硝子の風鈴が涼しげな音を鳴らす。
手元には大好きなキラキラの硝子たち。
……なんて、贅沢。
満たされてる。
私、とっても贅沢で満たされた毎日を送ってると自覚している。
…………なのに。
「いいのかなあ…」
また、零れてしまった。
どうしてだろう。
私、何かが物足りない。
ううん、物足りないんじゃない。上手く言えない。
でも、私の中の私が「違う」って言っている。
溢れるほどの幸せに「そうじゃないでしょ」って、叫んでる。
……自分でもよく分かんない。
私は座っていたクッションから腰を上げると、そのままペタペタと廊下へ出て紗和己さんの仕事部屋である書斎へと入っていった。
最初に目に入るのはL字形に置かれたワークデスク。ナラの風合いが優しい明るいナチュラルカラーのそれは、紗和己さん拘りの愛用品。
そのデスクにこれまた彼愛用のパソコンが置かれ、そこを囲むように整頓された書類やファイルが置かれている。
海外からの品物も扱ってる紗和己さんは当然外国語も堪能だ。目に入る書類は英語だけでなくドイツ語らしきものも伺える。
デスクの足元には商品のサンプルが入った箱。中を覗いてみると細かくメモの書かれた付箋が品物ひとつひとつに貼られていた。
それ以外にもお店の経営に関するデータのファイルや、宣伝など営業に使うのだろう広告会社の封筒などなど…
デスクと同じナラのハイシェルフにはキッチリ整頓されたそれらが隅から隅まで並んでいた。