腕枕で眠らせて*eternal season*



「寒くないですか?美織さん」


飛行機の中は程よい空調だったけど、足元が少し冷えてきたな、と丁度思っていたところだった。

多分、自分でも無意識に暖めようと併せていた足を、紗和己さんは見逃さなかったんだと思う。


いつもなら感激してしまうその気遣い。


けど。今ばかりはそれは私の心に逆効果。


「……平気。放っといて」


口に出して0,5秒後の後悔。

最悪。なんて可愛くない。
今のは私の人生ワースト5に入る可愛くなさだった。


彼の過保護に心を尖らせていたところに、またしても優しく気遣われてしまって、つい反射的に口をついてしまった。


ああ、最悪。最悪。


窓に映る紗和己さんの顔が一瞬曇って
「…分かりました」の返事と共に視線が再び雑誌へ戻されていった。


痛い、痛い。胸が痛い。


もうやだ、早く仲直りしたいのに。


こんな自分にイライラして、なのにそのイライラはなんだか紗和己さんのせいのような気もして。

イライラする。ソワソワする。ズキズキする。


もう私の中はイヤな気持ちだらけでグチャグチャだ。



(………あーあ………)


頬杖をついて眺める窓の外の空は、バカみたいに澄み渡ってるのに。

どうして私の心の中はフライト中止になりそうなほど真っ黒に曇っちゃったんだろ。




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