腕枕で眠らせて*eternal season*
…本当だ。本当だね。
やっと、ふたりで見れたね。
一緒に見たいってずっと思ってた。
大好きな貴方の隣で、沢山の景色を、沢山のものを。
一緒に見たら、きっともっともっと綺麗だよって、あの時から紗和己さんが教えてくれたんだよね。
「………嬉しい。ありがとう、紗和己さん」
「僕も……一緒に見られて、嬉しいです」
「…さっきはごめんね、紗和己さん」
「…僕こそ、申し訳ありませんでした」
今まで悩んでたのが嘘みたいに、素直に言葉が出た。
目に映るクリスタルが、あまりにも透明に煌めくから?
繋いだ手がほっこりと心に沁みるほど温かいから?
それとも
隣に立つ紗和己さんの優しい眼差しが、あの頃と変わらない事に気付いたから?
「…ふふ、」
こらえきれず、持ち上がった口角から笑いが零れた。
その笑いがたちまち紗和己さんにも伝染する。
「ふふふ、初めてケンカしちゃいましたね」
「これ、ケンカかなぁ。なんか私がひとりでむくれてただけのような気がする。だって紗和己さんは怒ってなかったでしょ」
「怒ってはいないけど、ほとほと困り果てましたよ。どうしたらいいのかずーっと悩んでました」
「ほら。あ、でもこれが私たちのケンカの形なのかな」
「なるほど。なんか僕たち、すごく新婚っぽい過程を経てますね」
可笑しくって、ふたりで声をあげて笑ってしまった。
「でも、新婚旅行でケンカは良くないね。あやうく残念な思い出にしちゃう所だった」
キラキラのシャンデリアを見上げながら言った私に、紗和己さんは握っていた手にそっとキスをすると
「怒ってる貴女も、僕には宝物みたいな思い出ですよ」
そう呟いて目を細めた。
「…喋って貰えないと寂しいですけどね」
最後にそう付け加えて。