腕枕で眠らせて*eternal season*
「心配しすぎって言うか…紗和己さん、私のコト、好き過ぎじゃない?」
「分かってます。なんか結婚してから僕、気持ちが加速してる気がして結構困ってます」
その気持ちは分かる。
私も時々、自分が彼をどこまで好きになるんだろうって怖いぐらいに思う時がある。
でも、もしかしたら今はその気持ち、紗和己さんの方が強いのかも。
「…困った旦那さま」
笑いながら冗談めかしてヨシヨシと彼の頭を撫でてみた。
鏡越しに少し拗ねた目で私を見て、紗和己さんは
「またそうやって煽る…」
と甘えるように肩に顔を擦り寄せた。
―――初めての夫婦喧嘩。
理由は彼の恋心、なんて
ちょっと甘過ぎない?
新婚旅行中、どこへ行っても私と手を繋いで離れない紗和己さんに何度も笑いそうになりながら、またひとつ夫婦の新しいページが刻まれた気がした。
「ねえ紗和己さん。金婚式でもまたオーストリアに来ようよ」
帰りの飛行機でそう言った私に、紗和己さんは嬉しそうに答えた。
「いいですね、50年後ですか。ふふ、是非来ましょう」
「その時もまだ、こうして手を繋いでドキドキ出来るといいね」
隣り合った席で握った手にギュッと想いをこめた。
「ドキドキ出来ますよ、もちろん。むしろ今よりもっと好きになってもっとドキドキしてるんじゃないですか?」
紗和己さんの言葉にクスクスと笑いを零して
きっとそれは本当になると
彼の私を見つめる愛しげな眼差しに、心のどこかで確信した。