面倒臭がりの異界冒険伝
「それじゃー、ごちそうさま。」
食べ終わって席を立ち、器を流しのところに運んで水につかしておく。
それから、一度部屋に戻って投げ捨てたコートを拾い、また階下の玄関へと向かった。
外は雪も降っているわけで正直家から出たくはないのだが、呼び出されているのだ。杏奈のファンクラブ(ストーカー)に。
家まで押しかけられても困るからすっぽかすわけにもいかないので、これを機にもう杏奈に付き纏うなという灸を据えるのともう一つ、あたしを寒い中呼びつけた迷惑料の代わりに報復してこよう。
「あれ?お姉ちゃん出掛けるの?」
丁度靴を履いていた時、リビングから出て来た杏奈に見つかってしまった。
別にこそこそしていた訳でもないので、適当に頷く。
「ちょっとねー。まぁでも、多分すぐ帰るから。」
そう言って、家を出た。
それがいけなかったのだと、後から後悔しようとも遅いかもしれないが。
正直言って、弱い。
指定された廃屋と言うそれっぽい所に来て、大人数で殴りかかられたからまぁそれなりに時間はかかったが、結果悠奈は無傷の上、ちゃんと注意して動いたから腕時計も壊さなかった。
時間にして約三十分と言ったところで、長期戦が苦手なあたしにこの人数相手は少し分が悪いかなと思ったが案外平気だった。
「けど、正直十分くらいで終わると思ってたんだけどなー。」
まぁ灸も据えて、もう付き纏うようなことはしないとも杏奈のストーカー兼不良集団は約束してくれたしそれでいいかと外を見る。
「さっきよりも吹雪いてるし…。」
面倒臭いとぼやきながら持参した傘を広げる。
帰リ道で、やけに消防車や救急車にすれ違ったがあたしには関係ないと思っていた。
燃え盛る炎をこの目で見るまでは。