面倒臭がりの異界冒険伝
家の前に集まる野次馬を押しのけて、燃える我が家に近付く。
人の壁を抜けた先は肌を焦がすような熱と煙で満ちていて、一瞬呆然とし固まった。
そして消防員を押しのけん勢いで悲痛に叫ぶ二人の…小父さんと小母さんの姿を見つけた。
「小父さん、小母さん!」
「…っ悠奈ちゃん!」
泣き崩れそうになる小母さん。悔しそうに顔を歪ませ唇をかみしめる小父さん。しかしそこに杏奈の姿が無かった。
「小母さん…。…小父さん、杏奈は?」
「まだ、中に…。気付いたときには火が回っていて、三人で逃げようとしたんだが、杏奈が…大切なものを忘れたからと言ってっ!俺が無理にでも連れ出していれば……悠奈ちゃん?」
「…っ、あんの馬鹿!」
悠奈がここまで感情を露わにするのを見るのは二人は初めてだろう。
自分の両親が死んだと聞かされた時ですら、感情を見せることは無かったというのに。
「……大丈夫。杏奈はあたしが助けるから。小母さんたちは心配しないで。」
そう言った瞬間、道を塞ぐ消防員を擦り抜けて炎の中に飛び込んだ。