面倒臭がりの異界冒険伝
「…っ駄目よ!悠奈ちゃん…貴女までっ!!」
後ろで小母さんが叫ぶ。
小父さんは多分目を見開いているだろう。
大丈夫。必ず助ける。
あの子は、たった一人のあたしの妹なんだから。
「杏奈っ!!聞こえてるなら声して!」
肌が焼ける。喉がひりついて、煙でむせ返る。
家を空けたのは三十分程度なのに、火の回りが早いのは冬の乾燥した空気のせいか。
早く見つけなければ。そして、早く逃げなくては“死ぬ”。
その言葉が頭を巡り、焦る一方で、だけど悠奈は落ち着いているようだった。
杏奈がいるのは多分、二階の自身の部屋だ。
炎を突っ切って二階に上がり、階段に近い部屋の扉のドアノブを掴む。
「…っ。」
掴んだ取っては熱を帯びていて、多分手は火傷した。
「仕方ない…強行突破でもするか。」
この状況下で、冗談めかしに笑みを浮かべれるのが自分でも不思議だ。
距離を取って、渾身の力でドアを蹴破る。