面倒臭がりの異界冒険伝
「お姉ちゃん、これって…」
どうやら意識はまだ保っていたらしい。
杏奈もこの状況を視認して、困惑に満ち満ちた表情をしている。
「さぁ…ね。だけど何か、物凄く嫌な予感しかしないの…気のせいじゃない気がするなー。」
そして、それと同じくらい…いや、それ以上に、これからあたしの嫌いな面倒事に巻き込まれていく気がひしひしとするのは本当に悪い冗談と思いたい。
轟々と唸る風が強まっていく。そして陣の放つ光も同じように増していく。
これからどうなるのかと言う恐怖や不安は不思議と感じなかった。
多分死ぬことはないんだろうなーという曖昧な直感で、頭に思うのはただ面倒臭いの一言だけ。
「はぁ…。めんどくさいのとか……」
ほんと、嫌だなぁ…。
悠奈が愚痴るように呟いた次の間には、空気がキィィィンと張りつめたような奇妙な感覚に襲われる。
唸る風音や、炎で家が焼け崩れていく音、外から漏れぎ超える人々のざわめきとサイレンの音が一瞬で消え去り、耳が痛くなるような無音の時に不快気に眉を潜めた。
風と光の渦の中心で、恐怖からか目をぎゅっと瞑った杏奈を護るようにしっかりと抱きしめて、一気に強まった光に目を閉じたその一瞬、視界が一瞬紫に染まったような錯覚を覚えた。