面倒臭がりの異界冒険伝


仕方なく悠奈は溜息を吐くだけに留めて、その時目に留まった紅藤色のシンプルな腕時計を手に取った。




それを見た杏奈も、目をキラキラさせて悠奈の手の中にある腕時計を覗き込む。




「可愛いっ。それ、お姉ちゃんに絶対似合うねっ!」




「あんがと。けど、それより杏奈はどれにすんの、結局。」




商品を元の場所に戻しかけながらそう言えば、杏奈は不思議そうな顔をした。




「え?…あ、言い忘れてたけど、腕時計はお姉ちゃんの買いに来たんだよ?」




「は?」




「だってお姉ちゃんが持ってたの壊れてたでしょ?お母さんにそれを言ったら、ついでに選んで来たらって。だからお姉ちゃんのを探してね。」




確かに前に持っていた物は壊れてしまった。




…それも、喧嘩の際に。



その時の喧嘩の原因は確か、杏奈に振られてもまだ諦め切れず悠奈に取り成しを頼んできた意気地なしの男共を面倒臭いと一蹴した結果、相手が逆上して…だったような気がするが正直よくあること過ぎて覚えていない。



つまりは悠奈にとっては日常的な出来事の一つということだ。



そして、口では正当防衛と公言する悠奈の喧嘩は、他者からしてみればそうは思わない。


言ってしまえば、そう…異常に強い彼女からの一方的な攻撃と言葉で精神を追い詰められるという辛苦を味わう場、だろうか。



そして偶に…でもないが、杏奈に嫉妬心と劣等感を抱いてその八つ当たりしてくる女子もいたりするので、杏奈に矛先が向かないよう…そして二度と来ないようあしらったりとする場合も多い。



勿論女の子相手に“手”は出していないけどね。




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