面倒臭がりの異界冒険伝
「まぁ、とりあえずはグラタンね。出来たら呼ぶから二人とも部屋で休んでていいわよ。」
「じゃ、遠慮なく二度寝してくるねー。」
「あ、待ってよお姉ちゃん。」
二人は二階にある自室に向かって、別々の部屋に入る。
悠奈は一人になって、コートから時計だけを抜き取って、後は床に脱ぎ捨てた。
紅藤色の時計はピンクにも見えるが、色で言えば薄い紫といった感じ。腕に嵌めてみたところサイズもぴったりなようだ。
そして確認が終わると早々にベッドの上に寝転がって布団を被る。
「あぁ…二度寝って最高…。」
呟きながら、すぐに意識は眠りへ閉ざされた。
闇の中で誰かが呼んでいる。
次第に色が見えて来て、それは燃え盛るような赤い炎になった。
庇うようにあたしを抱きしめた二つの腕の隙間から見えたのは――
「……ちゃん、お姉ちゃん…?」
「ん…、あぁ杏奈?どーしたの?」
杏奈の声に目覚めて、聞きながら体を起こした。
あまり覚えていないが、せっかくの二度寝で見た夢はあまりいいものではなかったように思う。