甘いキスと蜜の味【本編完結】
3階の突き当たりにある

数学準備室の扉をノックして

「失礼します、天城先生。
頼まれていた宿題持ってきました。
どこに置いたらよろしいですか?」

と、言って足を踏み入れた。

たくさんの棚やファイルばかりで

入る度に狭苦しくて、暗くて

圧迫感を感じるこの部屋。

こんなところに良くいられるなぁ…。

と思うほど、天城先生は

職員室よりこの部屋にいる事が多い。

私が入ると

部屋の窓際近くのテーブルに

くわえ煙草でノートパソコンを開き

キーボードをカチャカチャ動かす

天城先生の横顔が見えた。

私に気づいた先生は

キーボードを動かす手を止めて

くわえていた煙草を灰皿に

ギュッと押し付けて揉み消すと

「…おっ、花村か。ご苦労だったな。
そこにあるブルーのケースの中に
入れておいてくれ。」

と言って、近くの机にある

ブルーケースを指差した。

「はい。」

早くここを出たい私は

宿題を入れると

「…失礼します。さようなら。」

と頭を下げて部屋を出ようとした。


しかし

「…花村、ちょっと待て。
その扉を閉めてくれ。
で、閉めたらお前は
俺に紅茶を入れてくれ。
一式は全てあの奥の棚にある。」

と言って、天城先生は

部屋を出ようとした私を呼び止めた。




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