揺れる恋 めぐる愛
「なんであの夜、俺について来た?

なんであの時……

拒まなかった?」

彼の瞳の色が一気に悲哀を濃くする。

「それは……」

私は自分でもよくわからない気持ちを

表す言葉を見つけられなくて濁す。


彼は私を掴んだ腕をグイと強く引いて……

そばの薄暗い路地に連れ込んだ。

そして……

耳元に唇を寄せ、悪魔のように囁いた。


「嫌なら拒め。泣いて喚いて、抵抗すればいいだろう?

お前の曖昧なそれな!結局OKって言ってるのと同じなんだよ。

今だって、どうなんだ?結局……

なすがままじゃないか!?」

そう言って私の足に膝を割り込ませ、膝頭をグイと押し上げた。

この頃そういう刺激に慣れていない躰が……

困惑して震えていた。

「堕ちろよ。堕ちるところまで……

堕ちてきてしまえ!!」

耳たぶに痛みが走り、甘噛みされる。


私は聴覚と触覚を冒される行為に躰中に再び震えが走り、

足元が崩れそうになる。


彼が腕をつかんでいた手と反対の手を素早く腰に回し、

崩れかけた私を抱きとめる。


「ほら、こっちは素直だ。このまま行くぞ……」

口角が上がり黒い笑みを浮かべ、腰を抱えられたまま

彼と夜の街を彷徨うこととなった。
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