揺れる恋 めぐる愛
「主任、何してるんですか?」

わたしは慌てて自分の携帯に手を伸ばすが、体を捩られて手が届かなかった。

でもチラリと見えた画面は、たぶん……

私のプロフィール

「連絡先ぐらいいいだろう?」

彼はポケットを探って自分の携帯を取り出してこちらを見た。


私はしばらく彼から視線をそらしたまま、どうしようか悩む。

「アドレスだけなら……」

「他は?」

「とりあえず……」

「電話は?声は聞きたくない?」

「そこまでは……」

耳元に意地悪く吹き込む。

「声、聞きたくないの?」

躰がぶるっと震える。


嫌だ。どうしてこの人にはこんなに翻弄されるんだろう。

私の反応を見た彼の口角が上がった。


「電話は出ません……」

躰も固まって動けなくなった。

「じゃ、アドレスだけな」

彼は、私の見える所でそれを送信して登録する。


「今日は帰れよ。とりあえず……」

そう言って視線を合わさず、自分の携帯を弄ぶ。

「流されてでなく、きちんと選ばれなきゃ……

意味がないからな」


そして全ての作業を終えた私の携帯を突き返される。

私は彼に触れないようにそれをもぎとり、背を向け改札を通った。
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