揺れる恋 めぐる愛


今日はだめだったか……

俺は未練がましくその後ろ姿を見送ってからも

しばらくその場に立ち尽くしていた。

触れた時に感じる違和感がどうにも腑に落ちない。

渡したはずなのに連絡は全くなく、すれ違うこともなかった。

今夜あたりはあちこちで飲み会をしているはずで、かくいう俺のところもそうだった。

そしてなんとなく、他の…

それも彼女がうちの次に研修に入った部署は何時からどこにいるのか

喫煙室で繰り広げられる何気ない日常の会話に聞き耳を立てると、

なんと……

同じ店で時間だった。

この店は大きいから、知らなければすれ違うことも、

会うことはないだろう……

うちに来た研修の子たちの歓迎会のはずなのに、どうにも落ち着かない。

そんな自分の馬鹿さ加減に嫌気がさして

定時の2時間でお開きの声をかけ、あとは自由ということにして……

清算だけした。

お手洗いに行こうとしたら、奥のほうから出てくるのは……

彼女だった。

ここで逃したら次なんていつになるかわからない。

この今まで感じたことのないコレがなんなのか……

その顔を直接見て知りたかった。
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