揺れる恋 めぐる愛
「ごちそうさまでした」

手を合わせてきれいな所作で食事を終える。

「お水もらってもいい?」

「うん」

先輩は私から水の入ったコップを受け取ると、荷物をごそごそ探す。

「薬?」

「……うん。この頃疲れてるのか、少し体調がすぐれなくって…」


先輩はあまり病院好きではない。

その先輩が薬を飲むなんて……

相当悪いのだろう。

そんな中、わざわざ来てくれたと思うと申し訳なかった。


「大丈夫?」

「うん。そんなに大したことはないから……」

長いきれいな指で薬を摘まみ飲み、水で流し込む。

「あぁ~、そうだ。忘れないうちに……」

そう言いながら、先輩は窓辺に置いた大きな荷物を引き寄せ、

中身を掻き回す。


私は食器をシンクに片づけながら

「何?」

と聞いた。

「うん、前に欲しいって言ってたもの。やっと見つけたから……

それもあったから、顔だけでも見て渡せたらと思ってね」


鞄の中から、何やら引きだしてテーブルの上に置く。

私はシンクで洗い物をして食器を拭き終わると、

テーブルの前に戻ってくる。

そこには長方形の平らなものが置かれていた?


「何だっけ?」

「本当に覚えてないの?」

「う――ん。わかんない」

「じゃ、どうぞ」

先輩は私の方へそれを差し出した。私は丁寧に包み紙を開ける。
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