揺れる恋 めぐる愛
なんとかその姿を見ようとしたが……

それすらかなわず、私の邪念を見抜いて

あざ笑うように唐突に動くスピードを加速させてきた。

「あぁあぁああぁぁ~~~」

絶叫が静かな部屋の空気をひと際震わせて

もうそれ以上何かを考えることなんてできなくなる。

それが私とこの男との初めての交わりだった……


どうしてここまでしっくりとくるのだろう……

まるでお互いにしつらえられた躰。

でも私たちを説明する言葉は、会社の研修で出会った上司と部下。

そのわずかの間すれ違うのと変わらないほどの関係のはずだった……

今、その男と躰を交え、魂まで一つに溶け合おうとしている自分。


これから……

何が起きるのだろう?

でも……

確実に二人の間には何かがある。

この男の抱える寂しさのいくらかでも埋めたい……

私にできるのはそれくらいしかないのだろう。


激しく打ち付ける腰を私の躰に押し付けたまま

男が躰をぶるぶると小刻みに震わせる。

その瞬間(とき)がやっとキタ……


本当に?

本当にそうなの??

もう何もかもわからなくなって

何も信じられなくなっていた。

五感がうまく機能しない。

それでも私は男に掌を伸ばし、その淋しそうで大きな背中に腕を回した。

熱い躰を張り裂けそうな胸にしかと抱きとめながら、

訳も分からぬ込み上げる思いに……

ただただ溺れた。
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