揺れる恋 めぐる愛
最後に打ち上げ花火が派手に何十発も上がって……

静かになる。

この華やかさとその後のもの悲しさが

夏の終わりを表しているようだった。


花火が終った。

イベントが終れば見物客みんなが考えることは同じで、

帰り道は人でごった返し、すごい人波に呑まれそうになった。


視線の少し前には……

岡田さんが大事そうに美咲を抱えて歩いている。

つきあってまだ間がないんだからと思ってみても……

切ない気持ちになる。

守ってほしいと思う人は、今ここにはいない……

改めて独りだということを思い知る。

あれ以来先輩とはもちろん会っていないし、メールすら交わしていない。

遠距離恋愛の厳しさが身に染みる。


宮原さんと山路さんは、行きと同じように私の両隣にいた。

時間ばかりが過ぎても、なかなか前に進まない。

そんな人込みに揉まれる中、突然私の手に誰かの指先が触れた。

最初は当たっただけだろうと思っていたが、

ゆっくりと手首に向けて指が伸びてくる。

それに気が付き、驚いて触れた手の方を見てから視線を上げた。


山路さんと目があった。


どういうつもりなのだろう?

困惑気味の私に向かって、山路さんは無邪気な微笑みを浮かべながら、

しっかりと私の右手を握った。


「危ないよ。巻き込まれる……」

そう言って自分の方に引き寄せようとした。
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