揺れる恋 めぐる愛


主導権は、もちろんこっち……

懸命に快楽を追うだけの欲望をむき出しにした俺の身体の下で、

つむじ風に巻き込まれる木の葉のように翻弄される彼女が

目を見開き震えながら両手をこっちにゆっくりとかろうじて伸ばしてきた。

その掌が背中に触れてギュッと抱きしめられると

なぜか俺の胸が搔きむしられるように締め付けられて……

訳が分からなくなる。

俺は内に秘めていた欲望を構わず女の最奥にぶちまける。

そうすれば、あとはいつも通りのそれが得られるはずだった……

白い世界に放り込まれ、しばしの悦楽に酔いしれる。

どんな女とでもそうなるとは限らないが、

それでも独特の柔らかい温かさは、衝動の行き先を持たない俺の慰めにはなった。


気が付くと頬が濡れている。

汗じゃない……

これは涙???

自覚のない落涙に狼狽して彼女の顔をまじまじと見つめた。

女は力なくビクリと震える時もあったが、ぐったりと横たわっている。

少し覗いた時に感じたのは、その辺にいるような、

特に誰かと代り映えするような何かを持っている女ではなかったはず……

だから、お互いの淋しさをひと時分かち合えば、それでよかったはず……

なのにこの女は……

一体何者なんだ?
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