揺れる恋 めぐる愛


いつも繰り返される出会いと別れ。

仕事上そんなことは日常の事で、表面上で上手く付き合いさえすればそれでよかった。

調子のいいことばかりで、虚構の世界を渡り歩く。

小さなころのガラス細工ような箱庭での暮らしが壊れ、

強制的に入れられた箱庭で俺はかろうじて人の感情を失わずに済んだ。

それからしばらくして出会った君に手は届かず、

どっちつかずで基本的には他人のことで感情を制御できないことなんてない。

それなのに、この女の何が俺をそんなに揺さぶるのか……

その時はまだわからなかった。


人の思考が見えることは、いいことばかりじゃない。

ただ俺の場合、自分の意志で遮断することができたから、結構便利に使っていた。

そうじゃなきゃ、今頃おかしくなって病院送りになっていたのかもしれない……

だから、持っているモノ(能力)を最大限に活用してこの世を独りきり

結構自由勝手に生き抜いてきた。

大学を卒業して、言われるままにさせられた仕事は思ったより楽しかった。

結局コマとして利用されるために囲われたにしても、

俺は運が良かったはず。

ただ、そんな運なんて不安定なものにこれ以上身を預けるのはごめんだ。

せっかく持ち合わせた誰にもないちから(能力)で自分の欲しいものを手に入れたい……

できることなら君を……

そんなことすら、ままならなかった。
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