揺れる恋 めぐる愛
しばらく見ていると、上から声が降ってきた。

「何か食べる?夕食は済ましてきたんだったよね」

「うん。あまり遅い時間に食べると調子が悪くなるので、

来る前に食べてきてしまいました」

「いいよ。野乃花のペースで無理しないで。ただ…

少しだけ付き合ってくれる?」

「はい。用意しましょうか?」

「大丈夫。そのくらいなら、僕でもできるから……」

先輩はキッチンでごそごそして、

こちらのテーブルの上に次々と運んでくる。


「これ、安いんだけど結構飲みやすくて、いけたから」

と私には白ワインを出す。

自分はノンアルコールビール。

それぞれをグラスにお互いが注ぎ合って、乾杯をした。

「お帰り、ののか」


先輩が目を細めて、私を見つめた。そしてため息をつく。

「やっぱり、僕の家にいる野乃花を見るとホッとする。

先週は本当にごめんね。もう大丈夫なの?」


「うん。少しだるいけど、もう大丈夫」

「そう、よかった」

私はワインを少し含みながら、適当に食べ物を口に運んだ。

先輩のしぐさを綺麗だと思いながら……


私と先輩の間に流れるのは、オルゴール音楽のような時間。

同じ音色が重なり合い曲を奏でる。心地よさと穏やかさに包まれる。

曲調に波があっても振れ幅は小さい。
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