揺れる恋 めぐる愛
先輩にも私の何かが見えるのだろうか?

主任も怖い。

でも先輩はもっと怖い。

穏やかに暖かな空気を纏ったままで……

無意識に、残酷に突き落とす。

「本当に僕のもの?」


口を開くと何かが漏れ出しそうで、ただうなずく。

優しく響く先輩の言葉に、気持ちの乗り切らない私のあいづち。

先輩の溢れそうな甘い囁きに、深く考えてしまう私。

ゆっくりと向き合わせにされ、

「ここはすでに僕のものだよね」

唇と唇が重なる。

そして、いつものような甘い時間が私の身体を、心をなだめる。

私の怒りも、憤りも、不安も、怖れも……

なにもかも全て。


今回の帰省は少し早いが、翌週の平日にある

先輩の誕生日を早目に祝おうとやってきていた。

そして今夜は一緒に外で食事をする予定だった。

帰ってくる前、

「土曜の夜は特別な日だから外で食事をしたい」

と、先輩にあらかじめ伝えておいた。

お店は地元の友達に紹介してもらい、

そして今日だけ支払いは私がするつもりだった。

私が就職してから初めて一緒に過ごす先輩の誕生日。

これ以上自分の気持ちをぶれさせないためにも、先輩との絆を深めたい。

その時までは、本当にそう思っていた。
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