揺れる恋 めぐる愛
「こんなところに、良さそうな店を見つけたんだね?」

「はい。友達に聞きました」

「僕がどこか予約してもよかったのに……」

「だって、先輩の誕生日を祝う食事なのに先輩が

段取りするなんておかしいじゃないですか?」

「今時、どこにいてもネットとスマホがあれば大抵のことはできますよね。

あと、持つべきものは友ですね……」


「蓮先輩、お誕生日おめでとうございます」

「ありがとう。野乃花に祝ってもらって本当にうれしいよ」


食事はとてもおいしかった。

最後に先輩はコーヒー、私は紅茶を飲む。店員が、

「なにか、他にご注文はございますか?」

「いえ……」

「ごゆっくりどうぞ」

お辞儀をすると、テーブルを後にする。


「実はね。今夜は僕からも野乃花にねぇ……」

先輩はスーツのポケットに手を入れたままゆっくりと立ち上がり、

私の左手を自分の左手で取り立ち上がらせた。


真剣なまなざしの先輩と……

向かい合わせになった。

「のの……

これ」

先輩の右手の長い指に持たれた小さな指輪。

それを私の左手の指の先にまで持ってきて、

「いい?」

と聞いた。

私は思いがあふれて、嬉しくて涙ぐみながらうなずいた。
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