揺れる恋 めぐる愛
「のの。僕たちは出会って長い年月を一緒に

過ごしてきたわけじゃない、でも、お互いを分かり合うには

十分な時間を過ごしてこれたと思う。

離れてみて、ののが僕の人生には不可欠で

本当に大切な人なんだとよくわかった。

だから、僕の物だという印を受け取って欲しい」

先輩はそう私に囁きながら、決意を込めるように指輪を

薬指の奥に押し込んだ。

そして、

「結婚しよう」

微笑んで私を抱きしめる。

「うん」

「……よかった。断られたらどうしようかと思った。

じゃ……

すぐに仕事辞めてくれるよね?」


先輩は甘い言葉を告げ、私をより強く抱きしめて

信じられないことを言った。

「先輩……」

私は先輩の背中に回していた腕をほどき、胸を強く押す。

その行為に気づいた先輩が、眉間にしわを寄せながら私を解放する。

私達はそのまましばらく重苦しい空気の中、見つめ続けた。


そして、視線を逸らし俯いた。

「先輩……

勘違いしないで聞いてほしいんだけど……

私、結婚するなら先輩しかいないと思ってたから、とてもうれしい。

ただ、すぐ仕事を辞めるのは無理……」

その言葉に、先輩は信じられないというように目を見開いた。
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