揺れる恋 めぐる愛


新幹線に乗っている……。

通勤時の服装だから平日なのだろうか?

車窓は真っ暗で街の光が流れていくのを、

いつものリュックをギュッと抱き締めたまま、ただ見つめている。

きれいなはずのそれを見ながら私の鼓動は暴れまくっていた。

会ったら何から話したらいいんだろうか……

それに答えは出なくても、とりあえず先輩の言い分をもう一度きちんと聞いて、

私の思っていることも諦めずに伝えて、

それから……

それから…

考えれば考えるほど、どうしてなのか不安で不安でならない。

あふれ出そうになる涙を零れないように、ひときわ大きく目を見開いて堪えた。


最終便だったからか、田舎の構内は閑散としていて、駅前でたまたまみつけたタクシーに飛び乗った。

そしてたどり着いた建物のドアの前にしゃがんで嗚咽をこらえているのは確かに私?

すごく悲しい気持ちが胸に広がり……

涙すら出ない絶望の底にいるようだ。

ここはたぶん先輩のアパートの前??

先輩はどうしたの?何があったの?


これは現実じゃない……

確かに今遠恋で会えないことはつらいけど、

でもドアの前で泣くようなことはない。

なかなかメールもできなくなっているけど、

でもすれば返事は帰ってくる。

先輩は優しいから……

私たちは大丈夫。


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