モントリヒト城の吸血鬼~一夜話~


ぎゅっ、ぎゅっ、って
雪をふむわたしの足音に、
人のモノよりずっと
軽やかなふたつの
足音が混ざって。


わたしが足音のする方を向くと、
雪うさぎさんや雪ねずみさんと
同じくらいまっしろな
二匹の猫が駆けてきて
ポンっとわたしに跳びついた。

わたしは転ばないように
二匹をうけとめようと
身構えて…。



だけど、二匹の勢いが
すごくって、
抱えたままうしろに
転んでしまう。


「黎明、天明。
毎回毎回、沙羅を
転ばせるのはやめなさい。」

ぎゅっ、ぎゅっ、っと
足音がして、困り顔で
わたしの手を引いてくれたのは、
わたしがお姉さまと同じぐらい
大好きな朔夜様。

「おかえりなさい、朔夜様。」

「ただいま。おまえも、
いちいち二匹を受け止めなくて
いいんですよ。」

そういいながら
助け起こしたわたしの
背中の雪を払ってくれる
朔夜様に、わたしは
何も言わず笑顔だけを返す。
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