モントリヒト城の吸血鬼~一夜話~
「ああ、また、こんなに
冷たくなって。
寒かったでしょう?」
そう言って、わたしの顔を
覗き込みむ朔夜様の
暖かくておおきな
手のひらが、わたしの
顔を優しく包み込む。
すっかり冷えてしまった
頬も耳もすっぽり
包み込まれて、
わたしは今までで
一番の笑顔を
朔夜様に向けた。
ここで、寒かったって
肯定しちゃうと、
ダメなの。
…次が、無くなって
しまうから。
「朔夜様の手、あったかくて
きもちいい。」
わたしを包む朔夜様の手に
自分の手を重ねる。