モントリヒト城の吸血鬼~一夜話~

・雪の日に~仲睦まじい夫婦~

「あ、見て。凍夜。」

一面の銀世界に足跡を
残しながら、姫乃は
パッと走り出した。

少し遅れて、その足跡の
横に新しい足跡を残しながら、
凍夜も立ち止まりかがみ
込んだ姫乃の横に並ぶ。

「…また、ずいぶん
手の込んだモノを作ったね。」

「ね。ホントにすごいわよね。」

二人が見ているのは、昨日、
二人の妹、沙羅が作った
うさぎとねずみの雪像だ。

まるで、本物の動物に粉をつけて
固めたかのようにリアルな出来栄え。

毛の一本一本が細かく
彫り込まれ、見ているだけで
ふわふわとした触り心地を
思わせる雪の毛皮。

瞳のかわりに埋め込まれた
ドングリを覆う雪のまぶたなど、
埋め込んだ後にもたっぷりと
手をかけられて今にも
瞬きをしそうに見える。
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