モントリヒト城の吸血鬼~一夜話~


「できたっ!ほら、どう?凍夜。
うさぎに…見えないこともない
…ような…?」

できた瞬間は自信たっぷりの
どや顔だった姫乃は、凍夜の顔を
見るなり自信をなくしたのか、
語尾に疑問形がくっついた。

「…。」

…どうひいき目に見ても、
球体めいたものにドングリが
突き刺さっているようにしか見えない。

そう思ったが、そのままを言えば
怒らせるのは目に見えているので、
多少なりともオブラートに
包んだ言葉を探す。

「…悪かったわね、まるいものに
ドングリが刺さってるようにしか
見えなくて。」

声に出したつもりはなかったが、
出ていたのだろうか。

「声に出てなくても顔に
思いっきり出てるわ。」

勘のいい姫乃は、何も言わなくても
日常の何気ないしぐさや
表情でなんとなく凍夜の
考えていることをあてて
しまうことが多々ある。

仲がいい故のことなのだが、
こういうときは少し不便かもしれない。
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