モントリヒト城の吸血鬼~一夜話~


「耳当てをしていたら、
こういうことは
しづらいからね。」

朔夜を迎えに出た沙羅は、
毎回朔夜にこうして
もらうのが目的で寒いのを
こらえているのだと教えてやる。

「好きな相手が寒い思いを
しているとおもえば、
こうして暖めたくなる。」

凍夜の言葉に、姫乃は
なるほど、とうなづいた。

そうして、納得すると、
次第に顔を赤らめていく。

「…あの、凍夜?」

「なに。」

「ええと、もう、
わかったから…あの…。」

手のひらの中の赤く染まった
顔をまじまじと覗きこまれ、
姫乃はそわそわと視線を
さまよわせる。

「あの、もう、放して…?」

「嫌だ。」

そういって、凍夜が目を細めて
顔を近づけてくるから、
姫乃は思わずぎゅっと
目をつぶった。


ちゅっ、と小さく音を立てて、
凍夜の唇が姫乃の額に触れる。
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