モントリヒト城の吸血鬼~一夜話~
・素朴な疑問
「お姉さま、どうして
風邪でもないのに
がらがら声になってるの?」
昼食の沙羅のそんな一言に、
彼女の実の姉と
二人の義兄は三者三様の
表情で動きを止めた。
「…?みんな、どうかしたの?」
不思議そうに尋ねる妹に、
めずらしく最初に応じたのは、
姉の夫の凍夜だ。
「なんでもないよ。」
そういいながら、いつもと
かわらない表情の薄い顔で、
しかしどこか興味深げに
沙羅を見ている。
「ええ。なんでもありませんよ。」
凍夜に続いてそういったのは、
いつも以上の笑顔で
沙羅をみる凍夜の
双子の弟、朔夜だ。