モントリヒト城の吸血鬼~一夜話~


「大人には大人の事情が
あるものですよ、沙羅。
ところで、今日のデザートは
お前の好きなクランベリーの
マフィンです。
よかったら僕の分を
食べませんか?
ええ、もちろん、
食べますよね。
それだけで足りるわけが
ないでしょう。」

ほぼ無理やり押し付けられるように、
沙羅の前にデザートが並べられる。

食欲が人より旺盛な沙羅には
願ってもないことなので、
沙羅の意識は朔夜の
目論見通り目の前の
皿の上に集中する。

しかし、そんな朔夜の努力を、
あっさり凍夜が無駄にした。

「ちなみに姫乃の声が
かれてる理由なら、
夕べから今朝まで
僕にたっぷり…。」

「キャーッッッ!!?」

凍夜の説明を、突然遮ったのは、
つい先ほどまで真顔で
固まっていた姉の姫乃の
悲鳴だった。

その顔は、今まで
沙羅が見たこともないほど
真っ赤な色に変わっている。
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